株式会社Be-Doでは、都道府県別の地震と地盤災害の特徴について紹介するコラムを公開してまいります。とくに地形的特徴、過去の災害の履歴、懸念される地震、地盤の揺れやすさについて、順を追って紹介してまいります。今回は、福岡県の地形・災害と地震について紹介します。

 福岡県の地形的特徴

 福岡県は九州の北東部に位置しており、北東には関門海峡を隔てて山口県、南東には大分県、南に熊本県、西に佐賀県と接しています。旧国名の筑前国、筑後国、豊前国の一部の範囲からなっています。

 福岡県の地形的特徴は、北に玄界灘、北東に周防灘、南西に有明海の海に接しており、主に川沿いや大河川沿いの平野部と山地に分かれています。那珂川流域の平野である福岡平野九州一の大都市・福岡市を抱える平野で、東側に福智山地、南側に脊振山地に囲まれています。

 脊振山地の南には、筑後川流域の筑紫平野があります。筑紫平野は、福岡県側を筑後平野(佐賀側は佐賀平野)と呼ぶことや、平野が狭まっている久留米付近を境に、下流側を南筑平野、上流側を両筑(北野)平野と呼ぶこともあります。筑紫平野の南には耳納山地が、さらに矢部川の南には筑肥山地があります。

 県内北東部の遠賀川流域には直方平野があり、東側に福智山地、南側に古処山地があります。上流側の盆地を筑豊盆地と呼ぶこともあります。各沿岸部の海岸沿いには広く、海岸平野が広がっています。

福岡県の地形区分(地理院地図「地形区分」に地形の名前を加筆)

福岡県における過去の災害の履歴

  • 地震

 福岡県で発生した地震として大きなものは、最近では2016年4月に起きた熊本地震が記憶に新しいでしょう。熊本地震では、隣県で震源となった熊本県内では震度7を2回記録して甚大な被害がありました。福岡県では、16日の本震で、久留米市、柳川市、大川市、みやま市で震度5強を観測し、福岡県内では住宅に被害として半壊4棟、一部破損251棟という被害が出ています(内閣府まとめ)。

 近年で最も福岡県に被害が大きかった地震としては、2005年3月20日10時53分に発生した「福岡県西方沖地震」があります。この地震は、福岡県西方沖の深さ約9kmで発生したマグニチュード7.0の地震で、福岡県福岡市、前原市及び佐賀県みやき町で震度6弱の震度を観測しています。この地震により、死者1名、負傷者1,087名、住家全壊133棟、住家の半壊244棟、一部破損8,620棟の被害が発生したとされています(内閣府)。

 福岡県西方沖地震は、「警固断層(けごだんそう)」と呼ばれる活断層で起きた地震として知られています。警固断層帯は、下の図の通り博多湾から陸域にかかる南東部と、海側に延びる北西部に分かれていますが、そのうち海側に当たる北西部の沖合い、玄界灘で発生した地震でした。

警固断層帯の位置(地震本部「警固断層帯」より)

・台風など

 福岡県では、近年豪雨災害が多発しています。とくに、平成 29 年(2017年)の九州北部豪雨以降、平成 30 年 7 月豪雨、令和元年 (2019年)7 月、8 月の大雨、そして令和 2 年(2020年) 7 月豪雨など毎年のように豪雨災害に見舞われています。福岡県は台風の影響を受けることが多く、7~8月をピークとして、6月から9月の梅雨~台風シーズンの降水量が多くなっています(気象庁HP)。

 九州北部に甚大な被害をもたらした2017年の九州北部豪雨における被害は、福岡県内で死者37名、(うち、朝倉市33名、東峰村3名、その他1名)、行方不明者が2名(朝倉市2名)、家屋被害 が全壊287件(朝倉市260件、東峰村26件、その他1件)、半壊822件(朝倉市782件、東峰村37件、その他3件)、一部損壊39件 (東峰村8件、その他31件)、床上浸水22件、床下浸水598件という甚大なものでした(福岡県)。

 九州北部豪雨では土石流を中心とした土砂災害が多数発生し、床上・床下浸水家屋の数よりも全半壊した家屋の数が多かった豪雨災害でした。福岡県から大分県にかけて、「線状降水帯」が形成され猛烈な豪雨となりました。気象庁から、九州で初となる「大雨特別警報」が発表、記録的な豪雨(朝倉市にて9時間で774㎜)が降り続けました。これにより、河川の氾濫に加えて、土石流等が発生、土砂や流木が大量に流出して家屋に被害を与える被害が発生しました(福岡県)。

 「重ねるハザードマップ」で朝倉市付近の洪水・土砂災害ハザードマップを閲覧すると、下の図のようになります。地図下部の赤く塗られた付近は筑後川沿いにあり、洪水時に最大で5.0m~10mの浸水が想定されるという、2階の屋根以上が浸水する想定浸水深です。川に沿って洪水の浸水が想定される地域が広がっています。一方、地図の上方では濃い赤色、濃い黄色の部分が土砂災害特別警戒区域土砂災害警戒区域を示します。山沿いでは土砂災害、特に土石流の懸念がある地域も少なくありません。お住まいの地域の水害・土砂災害リスクについては、是非ハザードマップなどをご確認ください。

「重ねるハザードマップ」に「洪水」・「土砂災害」を重ね合わせ

 

福岡県で注意すべき地震は?

 福岡県にはいくつかの活断層があることが知られています。福岡県西方沖地震は、活断層である「警固断層帯」の北西部が活動した地震であることは説明しました。一方、警固断層帯南東部は、志賀島から博多湾を経て福岡市中央区、南区、春日市、大野城市、太宰府市、筑紫野市に至る陸域に延びており、警固断層帯北西部の活動とは別の地震活動があるものと考えられています。この範囲は九州一の大都市、福岡市の直下を縦断しており、今後、もし活動した際には、福岡市と言う大都市直下における活断層の地震発生が懸念されています。

 警固断層帯南東部の活動で地震があると、M7.2程度の地震が発生すると考えられています。今後30年以内の地震発生確率は0.3%~6%とされ、最大値をとると日本国内の主な活断層の中では、「地震が発生する可能性が高いグループ(地震本部)」に属する「Sランク」の活断層になります。それでは、警固断層帯で地震があった時、どのようなことが想定されるでしょうか。

 まず、警固断層帯の地震(全体が同時に活動)で想定される最大の震度を、下の図に示しました。黒みがかかった赤色の範囲は、震度7の揺れが想定される地域です。博多駅や天神駅付近の官庁街、歓楽街など市街地から福岡空港までを含む範囲で、都市高速やJR線沿いに震度7という激しい揺れがあることが想定されます。ピンクがかった赤色で示された範囲は震度6強が想定される範囲で、福岡市内の広い範囲から大野城市、太宰府市までが含まれています。

警固断層帯の活動で想定される最大の震度
J-SHIS Map (bosai.go.jp)にて「条件付超過確率」に

2020年地震活動モデル「警固断層帯 (全体が同時に活動)」を表示)

 

 警固断層帯の活動(南東部・北西下部)による被害想定は、福岡県による想定では、福岡県内の死者1,183名、負傷者22,508名、建物では全壊・大破が17,967棟、半壊が15,021棟と想定されています。熊本地震の被害は、死者273名(そのうち震災関連死は218名)、負傷者1,606名、住家の全壊8,667棟(消防庁)でしたので、警固断層帯南東部の地震は熊本地震の被害を大きく上回る想定となります。確率が低い地震であるとはいえ、発生したときの被害は甚大なものとなることがうかがえます。

 福岡県の地盤の揺れやすさは?

 福岡県の地震時の地盤の揺れやすさ(表層地盤増幅率)はどうなっているでしょうか。防災科研の「J-SHIS MAP」をもとに見てみましょう。表層地盤増幅率2.3以上の濃い赤色の地域は地震時に「特に揺れやすい地盤」、また1.8以上の赤色の地域が地震時に「揺れやすい地盤」であるといえます。

 福岡県で揺れやすい地盤が分布する地域は、人口の多い地域では福岡平野一帯が挙げられますが、とくに揺れやすい地盤はやや内陸の福岡空港~大野城市街付近や、宇美川、須江川沿いの志免町付近などが挙げられます。このほか、筑紫平野では柳川市から久留米市、大刀洗町付近で揺れやすい地盤が分布しています。直方平野では遠賀町から中間市付近、そのほか行橋市の行橋駅付近などにみられるようです。これらの地域では、地震時に揺れが大きく増幅され、揺れにくい地盤の地域と比べて震度が大きくなる可能性などに注意が必要とでしょう。

 一方、山地部や丘陵地などでは、表層地盤増幅率1.4未満の「比較的揺れにくい地盤」の地域が多く見られます。山地・丘陵地の自然地盤は硬く締まった地盤が多いと言えますが、傾斜が大きな山地・丘陵地などでは土地を平たん化する際に盛土造成が行われることが多く見られます。過去の地震被災地などでは、盛土造成地では自然地盤と比べて地震時の揺れによる宅地被害が増加することが知られており、造成地の住宅では地震対策の際に考慮しておくと良いでしょう。このほか、福岡県内に特有な例としては、旧炭鉱地帯では地下に空洞があるケースや、炭坑跡で埋め戻しされた地盤が軟弱であるケースなども想定されます。

J-SHIS MAP」に表層地盤増幅率を表示

 J-SHIS MAPは目安として非常に有用ですが、約250m四方のメッシュ単位の評価であるため、場所によっては3倍、1/3ほども数値と実測値が異なることがあります。また、過去の地震被災地では通り1本、家1,2件を挟んだほどの距離で地盤の特性が大きく変わり、被害の傾向も全く異なるという事例がありました。安心・安全な家づくりのためには地盤の微動探査でピンポイントの実測値を得ることができます。

 福岡県の地盤の揺れやすさを調査したい場合は?

 我が家で地盤の揺れやすさを計測できる「微動探査」を行うことで、住宅づくりや地震対策の際に検討するデータとして活用することができます。福岡県で「微動探査」を受注・実施している企業は以下となります。

福岡県で微動探査ができる企業は?

株式会社チクモク 微動探査特設ページ
 福岡県福岡市中央区天神3-10-27 天神チクモクビル8F(本社)
 福岡県飯塚市新飯塚22-1(飯塚営業所)

圓佛産業株式会社 
 福岡県大牟田市不知火町2丁目1-14 2階(大牟田本社)

微動探査にご興味・ご関心のある方、コラムの内容に関するご質問、ご取材等は、当社お問い合わせフォームよりお問い合わせください。

 コラム執筆:株式会社Be-Do会長/技術責任者 横山芳春 博士(理学)