株式会社Be-Doでは、各都道府県別の地震と地盤災害の特徴について紹介するコラムを公開してまいります。とくに地形的特徴、過去の災害の履歴、懸念される地震、地盤の揺れやすさについて、順を追って紹介いたします。今回は、滋賀県の地形・災害と地震について紹介します。

 滋賀県の地形的特徴

 滋賀県は本州のほぼ中央部に位置しており、北は福井県、東は岐阜県、南東は三重県、西は京都府と接しています。
 長く都が置かれた場所である奈良や京都にも近く、琵琶湖を中心とした交通・物流の要衝として発展。古代の東山道や北陸道が通り、平安時代以降も商業や文化の交流拠点として栄えました。信頼を基盤とした「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)の精神を大切にする「近江商人」も有名な地域で、現代の大企業に繋がる商家も多く輩出した土地柄です。

 地形的には、日本最大の湖であり滋賀県のシンボルである琵琶湖が県中央を占めており、県面積の約1/6をカバー(約670km²)しています。琵琶湖の周辺には、山間部から流れ出た河川から運搬された土砂によって形成した低地が発達しており、琵琶湖の東側を湖東低地、南側を湖南低地と呼ぶことがあります。
 県南部には近江盆地が広がっており、水口丘陵、甲賀丘陵などの丘陵・台地がみられます。県の周囲は山地に囲まれており、北東側は伊吹山地、南東側には鈴鹿山地(鈴鹿山脈)、南西側には比良山地があります。

滋賀県の地形区分(地理院地図「地形区分」に加筆)

滋賀県における過去の災害の履歴

  • 地震

 滋賀県の過去の地震被害としては、県内及び近県で発生した内陸直下の地震と、南海トラフ巨大地震による被害が発生しています。

 内陸直下の地震として影響が大きかった地震としては、1909年(明治42年)8月14日に、滋賀県北東部を震源とするM6.8の地震(姉川地震又は江濃地震と呼ばれる)があります。彦根で最大震度6(当時)を観測、震央周辺域では震度6相当と推定、滋賀県内の広い範囲で震度5~4相当と推定されています(気象庁HP)。滋賀県内では死者35人、負傷者643人、住家全壊972棟など、県北東部を中心に大きな被害が生じています(「日本被害地震総覧」による)。

 また、1952年(昭和27年)7月18日には、太平洋側沖合から近畿地方の下に沈み込んだフィリピン海プレート内の地震であり、奈良県南部を震源とする吉野地震(M6.8)があります。県内では死者1人、負傷者13人、住家全壊6棟という被害が生じています(気象庁HP)。この地震以降、滋賀県内で死者および住家の全壊被害をもたらした地震の発生はありません。

 過去に発生した南海トラフ地震による被害としては、1944年(昭和19年)の昭和東南海地震で住家全壊7棟、1946年(昭和21年)の昭和南海地震で死者3人、負傷者1人、住家全壊9棟という被害が生じています(気象庁HP)。

 このように、滋賀県では特にここ100年近く、大規模な死傷者、住家全壊をもたらすような大きな地震は発生していませんが、後述するように複数の活断層があるほか、南海トラフ地震でも被害を受けることが想定されている地域です。

 近年震度7を観測した地震があった熊本県、石川県、北海道など比較的地震が少ないとされた地域でしたが、大きな地震が発生しています。油断なく、備えを進めて頂きたいところです。

・台風など

 滋賀県は、過去より度々風水害に見舞われています。

 1896年(明治29年)9月に琵琶湖で発生した洪水(琵琶湖洪水)では、9月3日から12日の10日間で1008mmの雨量(平均降水量の6割に達する)を記録、特に7日には597mm(彦根)を記録しました。

 これによって琵琶湖の水位が急上昇し、周辺地域に甚大な被害をもたらしました。琵琶湖の水位は平時より+3.76mの過去最高水位を記録し、浸水日数は237日にも及んだとされています。県内の死者29名、住家被害は全壊3,000戸、半壊6,136戸、床上浸水35,627戸、床下浸水22,764戸という被害が生じています(滋賀県水害情報発信サイト)。

 1953年(昭和28年)の台風13号は、県東側を北東方向に進む典型的な雨台風で、彦根での最大風速は21m/sを記録。雨も平野部で100~200mm、鈴鹿、比良の山間部で300~450mmを記録し、県下の主要な河川は軒並み決壊・氾濫して浸水被害が多数発生し、県内の死者43名、行方不明者4名、負傷者497名という大きな人的被害が出ました。また、住宅の全壊522戸、半壊1,198戸、床上浸水9,390棟、床下浸水29,284棟という被害が生じています(滋賀県水害情報発信サイト)。

 近年では、2013年(平成25年)台風18号は愛知県豊橋市付近に上陸したため、滋賀県で記録的な大雨となりました。同年9月16日午前5時5分、全国初の大雨特別警報が発表される豪雨によって、県内各地で河川が氾濫、浸水被害が多数発生しました。県内では死者1人、負傷者9人、住宅被害は全壊10戸、半壊279戸、一部損壊439戸、床上浸水49棟、 床下浸水497棟という被害が生じています(滋賀県水害情報発信サイト)。

滋賀県で注意すべき地震は?

 滋賀県は、南海トラフ巨大地震の震源域に比較的近いことから、繰り返し発生する南海トラフ巨大地震の発生時には大きな被害が懸念されます。南海トラフ沿いでは、今後30年以内にM8~9クラスの地震が70~80%の確率で発生すると発表されています。南海トラフ地震は、過去600年ほどの間に約90~150年程度の間隔で大地震が発生しています。県内の全域が、南海トラフの地震で著しい地震災害が生じるおそれがあることから、「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定されています。

 滋賀県では、最新の南海トラフ巨大地震の被害想定で最大で震度6強の揺れが予測され、最悪の場合主に建物の倒壊によっておよそ400人が死亡、けが人はおよそ16,000人と想定されています。建物の被害については最悪の場合、地震の揺れによるものがおよそ9,200棟、火災が4,500棟、液状化が2,400棟と、合わせておよそ16,000棟が全壊したり火災で焼失したりするとしています。

 前回の南海トラフ地震は、別々の地震に分かれる「半割れ」タイプで、1944年の昭和南海地震、1946年の昭和東南海地震が最後に発生したものです。標準的な発生間隔は88.2年の間隔となることから、1944~1946年を基準とすると2032~2034年が「満期」となります。とはいえ、この年までに必ず起こるわけではなく、もっと早くなる場合もあれば、後倒しになる場合もあることでしょう。日ごろの備えが重要です。

 南海トラフ地震が発生した場合の最新の被害想定で、震度の最大値となる想定では、下の図のように滋賀県では南部一帯で広く震度6弱、平野部の一部では震度6強の強い揺れに見舞われるとされています。

南海トラフ巨大地震で想定される最大の震度(南海トラフ巨大地震の被害想定より)

 このほか、滋賀県とその周辺には複数の活断層があるとされています。活断層による地震の場合、それぞれの活断層の活動間隔は数千年などと長くとも、ひとたび活動してしまうと都市近傍の浅い場所で大きな地震が発生することになります。この場合、都市部や人の住む真下で地震が起こることから、大きな被害をもたらすことがあります。

 滋賀県で知られている活断層は、琵琶湖西岸断層帯、花折断層帯、鈴鹿西縁断層帯、、柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯などがあります。とくに琵琶湖西岸断層帯(北部)は、我が国の主な活断層の中では今後30年の間に地震が発生する可能性が「高い」グループに属しています。過度に恐れることはないにせよ、耐震性の向上などの地震対策を万全にして、万一の活動の際にも被害を最小限にすることが求められるでしょう。

滋賀県府とその周辺の主な被害地震(内閣府HPより

 滋賀県の地盤の揺れやすさは?

 滋賀県の地震時の地盤の揺れやすさ(表層地盤増幅率)の目安は、下の図の通りです。表層地盤増幅率2.3以上の濃い赤色の地域は「特に揺れやすい地盤」、また1.8以上の赤色の地域が「揺れやすい地盤」であるといえます。揺れやすい地盤では、地震の際に周囲より震度が大きくなる可能性があります

 地盤の揺れやすさはおおむね地形分類に則り、琵琶湖の周辺の低地部では広く揺れやすい地盤(表層地盤増幅率1.8以上)の地域が広がっています。大津市、草津市、守山市、彦根市、米原市、長浜市、高島市など琵琶湖岸の都市部に目立っています。

 一方、台地や丘陵やその周辺の台地部などでは、表層地盤増幅率1.4未満の「比較的揺れにくい地盤」の地域が多く見られます。丘陵地の自然地盤は硬く締まった地盤が多いと言えますが、傾斜が大きな丘陵部では土地を平たん化する際に盛土造成が行われることが多く見られます。過去の地震被災地などでは、盛土造成地では自然地盤と比べて地震時の揺れによる宅地被害が増加することが知られており、丘陵地では地震対策の際に考慮しておくと良いでしょう。

 J-SHIS MAPは目安として非常に有用ですが、約250m四方のメッシュ単位の評価であるため、場所によっては3倍、1/3ほども数値と実測値が異なることがあります。また、過去の地震被災地では通り1本、家1,2件を挟んだほどの距離で地盤の特性が大きく変わり、被害の傾向も全く異なるという事例がありました。J-SHIS MAPは目安として活用できますが、安心・安全な家づくりのためには地盤の微動探査でピンポイントの実測値を得て活用することができます。

J-SHIS Mapに表層地盤増幅率の凡例を表示

 滋賀県の地盤の揺れやすさを調査したい場合は?

 我が家で地盤の揺れやすさを計測できる「微動探査」、を行うことで、住宅づくりや地震対策の際に検討するデータとして活用することができます。滋賀県で「微動探査」を受注・実施している企業は以下となります。

丸松木材株式会社
滋賀県彦根市古沢町646番地

微動探査にご興味・ご関心のある方、コラムの内容に関するご質問、ご取材等は、当社お問い合わせフォームよりお問い合わせください。

 コラム執筆:株式会社Be-Do 横山芳春 博士(理学)