近年、しばしば地下の空洞や陥没がニュースに上ることを見かけます。地下に人知れず存在する空洞は、知らずに放置しておくと崩落や陥没に至ってしまうこともあります。

 地下の空洞は、どのようにしてできるのでしょうか。自然にできる空洞としては、石灰岩地帯等の特殊な地質でできるもの、地下水の流れなどでできるものが、人工的にな空洞としては、放棄された地下壕、防空壕が問題になるケースや、炭坑などの跡地であった場所、また地下配管などからの漏水により生じることがあります。

 地下にある空洞の調査方法としては、地表から浅い場所では主に地中レーダーを用いた方法などもありますが、地盤の「微動探査」で地下の空洞を探査した事例について紹介します。

 地盤の微動探査とは?

 「(常時)微動探査とは、下の図のように川の流れや潮の満ち干き、工場や交通の振動など、人が感じないくらいの揺れを微動計(高精度の地震計)で探知して地盤を探査する方法です。超音波を発したり、振動を発したりすることはありません。株式会社Be-Doビィードゥ)では、食パン一斤より少し大きいくらいの大きさの微動計を地面に置いて探査を実施します。

 地盤の微動探査では、微動計を複数台配置した「微動アレイ探査法」を用いることで、地下の地盤の構造(S波速度構造)などを知ることができます。なお、「微動アレイ探査法」は、2022年の国際規格ISO24057:2022に規格化されており、株式会社Be-DoではISO24057に準拠した調査を実施しています。

 地盤の微動探査モデル図

 地盤の微動アレイ探査は、60㎝半径に4台の微動計を配置する「極小アレイ探査法(写真)」と、5~15m離して3台の微動計を三角形状に配置する「不規則アレイ探査法」を実施します。1地点につき、18分間の計測を行います。極小アレイ探査法では、配置した約1.2mの円の範囲で、地下15~30m程度までの地盤構造として、地盤の硬さ=S波速度構造と、地層の変わり目の深さの情報が分かります。

 微動(アレイ)探査による空洞調査では、このような極小アレイ探査の配置を連続して行っていくことで、地下に空洞がある範囲において、地盤構造が他と違っている点を検知することで空洞の可能性を調査していく手法となります。なお、微動探査では地表から1~2m程度の深さの精度は劣る為、概ね2~3mより深い場所にあると想定される地下空洞の探査に適しているものと考えられます。2m程度より浅い空洞の探査には、地中レーダー探査が適しています。

地盤の微動アレイ探査の実施例(極小アレイ探査)

過去の空洞探査の事例

 ある関東地方の自治体の方のご依頼で、ローム台地にある住宅街の一角で地下空洞の探査を行った際の事例を紹介します。この地域では地中に戦時中に作られた地下壕がある地域です。近隣では、このような地下壕跡で陥没事故なども起きているため、空洞の位置の探査に微動探査を活用できないか試した事例です。およそ空洞がある位置は絞り込まれていましたが、その幅が狭いことが想定されたため、空洞が存在すると想定される地点で探査が必要でした。

 そこで、下の図のように、地盤の微動探査の配置として「極小アレイ探査」を、連続的に約1mおきに5地点で実施してみました。なお、参考として地域の深い地盤までの特性も知る為、不規則アレイ探査も1点実施しています。

微動探査による空洞の探査事例(地点3と同じ方法を1~5の5地点で実施)

 地盤の微動探査では「S波速度」という数値(地盤の中を地震の波の通る速さ)を得ることができます。下の表のように、深さとS波速度のデータが得られます。一般に、S波速度の遅い(数字が小さい)地盤はゆるい地盤S波速度の速い数字が大きい)地盤はかたい地盤と考えられます。なお、S波速度はボーリング調査の際に行う「標準貫入試験」で調べる「N値」とも比較することができる、「換算N値」として換算することもできます。

 今回のテスト空洞探査と、その他のテスト事例などにより、空洞部ではS波速度が極端に速いか、周囲より遅い数値として得られることがわかってきました。この場所では、5地点で極小アレイ探査を行ったうちの、中央の調査地点3と、隣の調査地点4で、深さ約6.1~9.0mの付近に、周囲の同じ層と比べて不自然にS波速度が遅い部分(黄色で着色)を検出できました。

調査地点で得られたS波速度のデータ

 この結果を、S波速度別に色を塗って地下のS波速度の速さを図で示す(S波速度構造)と、傾向が良くわかります。上下の地層よりS波速度が遅く、両側の同じ深さの地層と比べても地点3、地点4のみ、S波速度が遅い部分が確認できました。ほぼ連続した場所で微動探査をして見られた不自然な層は、局所的に物性が周囲と異なる部分があるということが分かります。この場合は、原因として地下に空洞であることが考えられました。

調査地点で得られたS波速度を深さごとに着色したもの

 なお、5地点以上を連続して調査した場合は、下の図のような断面図を作ることができます。地点3~4の間の一部分で左右の地点とは連続しないS波速度の遅い部分を検出することができました(断面図は、防災科学技術研究所先名重樹主幹研究員作成・提供)。

 なお、各地点の間は、ピンポイントのデータからグラデーションで作成しているので、厳密に地点の間がわかるわけではなありません。地点3~4の間も表層付近にあるS波速度の遅い層とつながって見えている部分もありますが、実際には連続しているものではないとみられます。

※微動探査により、このような断面図の作成をご希望される際には事前にご相談下さい。5地点以上で、地盤の極小アレイ探査を線状に配置した際にお出しすることができます。

調査地点で得られたS波速度による断面図の事例

微動探査結果と空洞の位置の比較

 微動探査で空洞と考えられる位置を、調査地点に示していると以下の赤丸の範囲である地点3~4の範囲にとどまり、幅約2m以内にあることが絞り込まれました。

 別途、空洞内の実地調査などから得られた実際に空洞があった位置は、微動探査で空洞化が想定されている地点と良く一致していたことがわかり、微動探査により幅の狭い空洞の位置を特定することができました。推定される深さもよく一致しており、地中レーダー等では深さが深すぎて探査の難しい、深さ6m以深にある空洞を特定できた事例となりました。

 微動探査で特定された空洞の位置の例

 また、地震被害があり地下に空洞ができているとみられる地域で微動探査を実施した結果、ボーリング調査による空洞化が想定される深度で、著しくS波速度の低い層が検出できるなど、空洞を対象とした微動探査で一定の成果を得ることができました。

 以上の例のほかに、ある地域にて株式会社Be-Doの登録企業が実施した、地下の水路トンネルの位置を特定できた事例があります。こちらは発注者様のある案件のため、結果の詳細は公開できませんが、上記の事例と同じような方法で空洞の可能性が有る位置を検出できました。

微動探査で空洞の探査を行うメリット、デメリットは?

 従来、ある程度深い場所にある地盤の空洞探査では、費用と日数をかけてボーリング調査を実施して空洞の位置を把握したのちに、孔内カメラや3D レーザースキャナーによる調査が必要でした。

 微動探査による空洞調査では1か所が18分ほどの調査(極小アレイ探査の機材設置時間)で、費用もボーリング調査に比べて安価でできることから、事前に微動探査で空洞があるとみられる場所の絞り込みに使って、孔内調査や埋め戻しの際のボーリング掘削と併用することで迅速な範囲特定が調査が可能となることが期待されます。

 また、微動探査では地表に孔を空けたり大きな機材を搬入する必要がなく、機材を置くだけで、アスファルト舗装やコンクリート敷きの上でも調査が可能であることから、陥没の危険があり大きな機材の搬入や地表に穴の空けられない場所でも調査を行うことができ、住宅街や路上での空洞探査などに向いている調査方法であると考えられます。

微動探査で空洞の探査を実施する際のメリットと考えられる点
・調査地の面積や調査密度、知りたい空洞の深さや大きさから調査数を自由に設定できる
 ※ある程度特定の範囲が絞られた中で、どの場所に空洞があるかを探知するのにむいている
・ボーリング調査などより安価、短時間で大きな機材を搬入せずに調査ができる
・地中レーダーで探査の難しい深さ3m以深の空洞も検知できる
・カメラ等を挿入、薬液注入を実施するボーリング位置の絞り込みやにも活用可能
・アスファルト舗装やコンクリート敷きの上でも、穴をあけずに調査することができる
・空洞の上に下水管などがあっても、その下にある空洞が検知できるケースもある

微動探査で空洞の探査を実施する際のデメリットと考えられる点
・調査地があまりに広い場合、地点数が増えるのでコストが増す場合がある
・調査地の中で空洞があるかないか、どのあたりか目途がつかないと地点数が増えてコストが増す場合がある
・2mより浅い地点の空洞については検知できない可能性も高いと見込まれる

 なお、以上の微動探査による空洞調査は現状のところテスト事例であることやデメリットで紹介した場合には不適である場合も考えられますが、今後様々なケースでの活用が見込まれます。空洞調査をご検討の方は、株式会社Be-Doまでご相談下さい。

 コラム執筆:株式会社Be-Do会長/技術責任者 横山芳春 博士(理学)